naotsune’s blog

横浜のとあるおじさんの日記

忘れたくなんてない

「忘れたくなんてなかった」

私が愛してやまない映画「八日目の蝉」のクライマックスシーンで主人公の井上真央が叫ぶセリフだ。豊かな自然と愛情にあふれた田舎の人々との記憶を、実の母親から厳しく封印されてしまっていたのを思い出し、その悲しみを解き放った瞬間だ。とても衝撃的で悲しいシーン。実の母親からすれば、誘拐されていた間の娘の思い出を、多感な三つの子の大事な経験として認めてあげることなど到底できないのも無理はない。関西弁を駆使する娘に発狂して烈火のごとく𠮟りつけてしまう母と、号泣しながら謝罪し記憶を封印することを選択せざるを得なかった、たった四歳の娘。よくこんな映画を作ったものだ。

 

「忘れてくれるな」

さだまさしのヒット曲。

 

「忘れるということ」

いろいろなことが思い出せない。初老の特徴でもある。忘れてしまえば幸せなのだという誰かの言葉は間違いない。忘れることさえ可能なのであれば、死ぬことだって怖くないのだ。死んだら忘れるのだ。死の瞬間の恐怖だけではなく、大切な思い出や学んできたことや忘れたくないこともすべて。